事例
【トップ対談】顧客ニーズの変化へ迅速な対応を -統合プラットフォームで広がる新たな価値創造-
電気通信事業
- 複数のサービスが個別に開発・運用されており、共通サービスを提供する場合のコストが大きい
- 多数のステークホルダーが存在し、情報の一元化と連繋・共有がされていない
- 状況に応じて迅速かつ柔軟に対応できるパートナーの不在
自社保有の光ファイバー網を強みに通信事業を提供するアルテリア・ネットワークス。法人向けのネットワークサービスや、マンション全戸一括型インターネットサービスでシェアNo.1※の実績を重ねてきた同社では、2020年頃から、その基盤や知見を活かし、個人向けビジネスも展開しています。そこで重要なのが、以前より提供してきたサービスを統合するプラットフォームです。オープンストリームは2021年からそのプラットフォーム構築をサポートしています。
このたび、アルテリア・ネットワークスでプラットフォーム開発開始当時、新規事業を担当していた常務執行役員の大橋 一登氏と、オープンストリーム 代表取締役社長 芝村 健太との対談の機会をいただきました。対談では新たな市場への参入の背景や開発の方針、将来の展望について意見を交換しました。
コンシューマ向け事業拡大を目指すアルテリア・ネットワークスの新たな挑戦
アルテリア・ネットワークスは、電気通信事業者として、AI・クラウド・IoTなどの技術による産業や生活の革新を支えるネットワークやデータインフラを展開する企業で、全国に展開する自社保有の回線網を活かしたサービスを提供しています。
法人向けには、お客様の要望に応じてネットワーク環境をオーダーメイドで構築するネットワークサービスを展開。また、集合住宅向けのマンション全戸一括型インターネットサービスでは国内トップのシェアを誇り、さらにこれらの基盤を活かして新たな価値を生み出すDXサービスを拡充しています。新たな市場に参入する背景について、大橋氏は次のように語ります。
「マンション向けの全戸一括型インターネットサービスは、個人にサービスを提供するものの、管理会社やデベロッパーが顧客となるBtoBtoCビジネスです。そこで、当社の更なる成長を目指し、より大きな市場で成長の余力の大きいDtoCビジネスを拡大していくことを企図しました。当社のマンション向けインターネットサービスの利用戸 数は100万戸を超えています。この需要の取り込みに加え、ゲーム情報メディアを展開するGameWithと資本提携して、ゲーマー向け通信サービスやeスポーツ関連のサービスを提供しているのもその一環です。PCゲームユーザーは全国で約1400万人 いるため、より大きな市場にアプローチできることになります」
同社の歴史は、1997年に設立したグローバルアクセス株式会社に始まります。その後、複数社の合併・吸収を経て2014年にアルテリア・ネットワークス株式会社が発足し、さらに2017年には株式会社つなぐネットコミュニケーションズがグループに加わり、マンションインターネット事業を統合。また、2022年GameWith ARTERIA株式会社を設立しています。
この流れの中で同社は2020年ごろから、コンシューマ向けに直接サービスを提供できるプラットフォームが必要だと考えました。大橋氏は「これまで、マンションの住民向けに、ネット接続やメールアドレス管理、セキュリティサービスなどを提供するインターネットサービスのマイページ、マンション共用部の予約サイト、eコマースサイトなど、複数のサービスサイトがありました。しかし、それぞれが個別に運営されていたため、ユーザーにとっては使い勝手が悪く、アカウントをスマートに一元管理できるプラットフォームへ統合して利便性を高めると共に、複数サイトの運用を統合することによるコスト削減を実現したいと考えていたのです」と振り返ります。
プロジェクト成功の鍵は、力強いメッセージの明示や役割の明確化
サービスプラットフォームの構築をするにあたり、大橋氏がパートナー選定の際にこだわった条件は、「柔軟な対応」ができることでした。その背景には、既存のサイトの機能を活かしつつ、それらを継続しながら統合していくという考えがあったためです。そして、クラウド事業者から紹介されたいくつかのベンダーの中から、オープンストリームに白羽の矢が立ちました。
大橋氏は「アジャイルにサイトを統合していくやり方に理解を示していただいたことが決め手です。他の企業からの提案は、最初に仕様を決め、順序立てて進めていくウォーターフォール型のアプローチがほとんどでした。既存サイトの関係者として複数の開発パートナーが存在している中で、全体の仕様を初期の段階で固めてから進めていくやり方では実現は難しいと判断しました」と理由を説明しました。
この方針に対し、本プロジェクトの責任者となる統括PMとして名を連ねた芝村は「従来のウォーターフォール型の手法は王道と考えられてきましたが、アジャイルなスタイルを希望するお客様も増えています。当社ではお客様ごとの課題に応じて、様々な場面や状況に柔軟な対応が可能です」と話しました。
こうして、マンションの住民向けプラットフォーム統合プロジェクトは2021年の6月頃からスタートしました。このプラットフォームでは、クラウドベースのシングルサインオンの仕組みを取り入れ、SMSやSNSアカウントを利用した簡便な会員登録に加え、これまでサービスごとに必要だったログイン認証も、たった一度の認証で完結できるようになるなど、ユーザーの利便性も大幅に向上させました。それを各サイトへ順次適応させながら、新たに統一プラットフォーム上でコンテンツ販売やサービス提供へと拡大していく構想です。
プロジェクト開始後、両社は数ヶ月間にわたり検討を重ねる中で、それまでの予想を上回るプロジェクト規模になるという認識に至りました。オープンストリームでは体制強化の必要性を感じ、芝村が2021年12月頃から本プロジェクトで陣頭指揮を執っています。
当時の状況について芝村は「既存サイトの開発・運用に関わる会社が多数存在するなど、当初の想定以上に関係者が多かったため、より多くの人員が必要だと判断しました。そこで、当社の主要な精鋭メンバーを集めてチーム編成を強化しました」と振り返ります。
大橋氏は「同時に当社のメンバー編成にも変更を加えて、PMを中心に両社が一丸となることができました。このころからうまく動き出したと感じています」と、プロジェクトが軌道に乗った当時の手応えを語りました。
このチーム編成の強化・変更により、各社の役割や要件を適切に整理できるようになりました。芝村は「大橋様は、ほぼすべてのミーティングに参加し、重要なポイントについて熱意を持って説明いただきました。メンバー全員に対して、明確な意図をきちんと示してくださったので、全員が同じ方向を向くことが出来ました」と話しました。
2022年6月にシングルサインオンに対応した後も、約3か月ごとに新たな機能やサービスを追加するなど、利便性の改善を続けています。また、新たな動きとして、マンションの住民向けだけでなく、eスポーツに関連した、ゲーマー向けの回線サービスも提供し、そこにさまざまなコンテンツを追加していく計画も加わりました。
プロジェクトは止まらない―新たな機会創出とコスト削減効果に期待
これまでのプロジェクトを振り返った大橋氏は「現在は基盤も整い、第2フェーズに入ったと言えるでしょう。しかし常に変わりゆくお客様の要望に合わせて、仕様の変更にも素早く対応していくという姿勢は変わりません。新しいプラットフォームにアクセスする人が増えれば、より多くの方に当社のことや、ゲーマー向け回線などの新サービスを知ってもらえる機会も増え、さらに認知度を高められると期待しています」と期待を述べました。
一方で、新規事業を継続する際には、シビアに成果を計測・予測しながら、そのパフォーマンスに応じて開発ボリュームを調整していく必要もあります。オープンストリームではそうした調整にも柔軟に対応する体制を整えています。
芝村は「新規事業を推し進めていく中で発生するリソースの調整にもうまく対応する必要があります。特定の人に依存する属人的な状況では変化に対応できません。当社では同じレベルのキーパーソンをいつでもバランスを見て再配置できる体制を整えています」と述べ、大橋氏も「プロジェクトが停滞することがないように、都度こちらの要望に対して臨機応変に対応いただけるのは大変助かります」と、柔軟な対応の重要性を語りました。
新プラットフォームの効果は新規ビジネスの機会だけではありません。システムを統合することで、過去のサイトを停止し、それまで発生していたコストを削減することが可能となります。
大橋氏は「従来サイトのうち、新プラットフォームへ移行できているのはまだ一部です。従来サイトが行っていたすべてのサービスを新プラットフォームに移行できれば、かなりのコスト削減を期待できます。全体のコストを削減しながらも、サービスの質やビジネスレベルを高めるということを両立していきたいと考えています」と展望を述べました。
プラットフォームに各種サービスを統合して、新たなビジネスを模索するアルテリア・ネットワークス。その新しい価値創造ヘ向けて、オープンストリームはこれからもスピード感と柔軟性を以て、支援を続けていきます。
「デジタルの世界は、我々ですら予測できないほど変化が激しいものです。プロジェクトの要件が次々と変化するのは、お客様の声を反映しているからに他なりません。そのような要望に対して先端技術を用いて応えるのが我々の使命です」(芝村)
「我々の通信サービスは止まることがありません。さらに実現したいことも日々変わってゆく中で、どのような対応をしていくか、これが重要です。新事業や新サービスに注力することもあれば、コスト削減の方へ舵を切ることもあります。これからも、柔軟に対応しながらビジネスを進めてまいります」(大橋氏)
※MM総研「全戸一括型マンションISPシェア調査」(2023年3月末)に基づくもの
アルテリア・ネットワークス株式会社
常務執行役員
大橋 一登氏