事例
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百貨店DXを推進するDevOps基盤を構築し、新サービス・新機能のリリースサイクルを従来の4分の1に圧縮
ソフトウェア・情報処理
- ウォーターフォールで開発していたが、ビジネスのスピードにシステムの改修スピードが追い付かない
- 三越伊勢丹グループ固有のデータ保持方法が多く、データの利活用が困難
- アジャイル開発が可能になり、新サービス・新機能のリリーススピードを従来の4倍に高速化
- サービスの開発と改善の俊敏性を確保し、百貨店DXを推進するための土台を形成
- 事業会社のサービス開発要求への即応力を高め、三越伊勢丹グループのビジネススピード向上に大きく貢献することが可能に
導入背景
DXを推進する開発体制の確立に向けて新たなデータ収集・配信基盤の構築へ
三越伊勢丹グループは、百貨店業を中心にショッピングサイト(EC)業、クレジット・金融・友の会業、不動産業などを展開しています。
同グループは近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)にも意欲的に取り組んでおり、2019年にはDX戦略子会社である株式会社IM Digital Labを設立し、同社と三越伊勢丹システム・ソリューションズとの両輪でDXを推進する体制を整えています。
これまでに、足形の3D計測による靴の提案サービス「YourFIT365」をはじめ、オンライン接客アプリ「三越伊勢丹リモートショッピング」など、デジタル技術とデータを活用した新サービスが次々とリリースされ、継続的な改善が繰り返されています。
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そうした新サービス・新機能開発のアジリティ(俊敏性)を確保するための基盤として、三越伊勢丹システム・ソリューションズが構築したのがデータ収集・配信の機能を備えたプラットフォームであり、そのプラットフォームを土台にしたアジャイル開発/DevOpsのための基盤です。その構築に乗り出した経緯について、同社のICTサービス統括部でICTプラットフォーム部長を務める唐沢 猛氏は次のように説明します。
「例えば、商品管理や顧客管理、販売管理、ECシステムなど、グループの事業を遂行するために必要なシステムはすべて揃っていますが、それぞれのシステムは事業部ごと、あるいはシステムごとにサイロ化された状態にあり、新しいビジネス要件を満たすためにグループ内のデータを活用してサービスを立ち上げようとすると相当の期間を要するのが通常でした。また、当グループにはCRMのシステムもかねてからありましたが、それは特定サービスのお客さまとの関係を維持するためのもので、DXの要(かなめ)となる顧客接点からのデータを広く収集し、新たな洞察を得る仕組みではありませんでした。そこで、データ収集・配信のための新たなプラットフォームを構築し、DXの推進に資するアジャイル開発とDevOpsのための基盤を整えることにしたのです」
選定理由
クラウドに関する確かな専門性とクイックなレスポンスがオープンストリーム採用の決め手に
三越伊勢丹システム・ソリューションズでは、上述した基盤づくりを支援するSIパートナーとしてオープンストリームを採用しました。その理由として唐沢氏は、クウドプラットフォームに関する知識の深さと、顧客の要望に対する迅速で的確なレスポンスを挙げます。 「オープンストリームとは2016年ごろから付き合いがあり、それを通じて、顧客の要望に対する同社のレスポンスの速さとソリューション提案の的確さに感心させられていました。加えて、今回の基盤はAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureなどのクラウドプラットフォーム上で構築しようと決めていたのでクラウドネイティブの技術とその活用方法に精通していることがSIパートナーの絶対条件でした。オープンストリームはその要件も満たしており、採用に迷いはなかったと言えます」
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ICTプラットフォーム部長
唐沢 猛氏
設計開発
クラウドの標準サービスを活用しマイクロサービスによるシステム構築を実現
三越伊勢丹システム・ソリューションズの課題と要望を聞いたオープンストリームが提案したのはAWSとMicrosoft Azureを使ったマイクロサービスによって新サービス・新機能を構築するためのソリューションです。内容は、三越伊勢丹グループの既存システムからデータを収集して整理(標準的なデータモデルに変換)し、Web APIを通じて提供するプラットフォームの構築と、クラウド上でのCI(継続的インテグレーション)/CD(継続的デリバリー)を可能にする自動ビルド、デプロイのツールなどによって構成されています(図)。
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「三越伊勢丹システム・ソリューションズ様、株式会社IM Digital Lab様と共に、少人数でチーム(スクラム)を組んで、サービスの開発とデプロイを短サイクルで行っていくアジャイル開発を可能にするソリューションを検討しました。開発メンバーへのスキル移転やチームビルディングの支援もソリューションに含まれています。ソリューションの基本的な考え方は標準的なツールとフレームワークによってすべてを構成するというものです。 コンテナ管理やJavaフレームワークの選択肢はさまざまですが、当社の経験に基づき、今回の基盤構築に最も適切と判断したものをお勧めしました」(オープンストリーム プロジェクトリーダー)
ソリューションの決定後、三越伊勢丹システム・ソリューションズはオープンストリームによる技術支援を受けながら、既存システムのデータをWeb APIで扱えるかたちへと標準化する作業を進めました。その点について、実際の作業に携わった三越伊勢丹システム・ソリューションズの天野 悠史氏はこう振り返ります。
「例えば、商品データにしても、当グループのデータモデルは百貨店業に最適化された特殊性の強いもので、そのままではWeb APIで扱ったり、他のシステムのデータと統合したりするのが困難でした。それをWeb APIで扱えるよう標準的なモデルへと成形しなおす作業を進めたわけです。この作業によって既存のバックエンドシステムのデータを(Web APIを通じて)フロントエンド(顧客接点)システムで活用するのが容易になり、バックエンドシステムとフロントエンドシステムとのデータ連携も迅速になりました。また、作業を進めるなかで、フレームワークの活用法など分からないことはすべてオープンストリームに問い合わせるだけで解決できたので非常に助かりました」
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天野 悠史氏
導入効果
新サービス・新機能のリリーススピードが劇的にアップ、人材育成への期待も膨らむ
今回の基盤構築における最大の効果として唐沢氏が挙げるのは、アジャイル開発/DevOpsが可能になったことによる新サービス・新機能のリリーススピードの劇的な向上です。従来は、既存システムのデータを収集・活用したり、既存システムと新システムとのデータ連携を実現したりすることが困難だったうえに、開発手法もウォーターフォールがメインだったことから、新サービス・新機能のリリースには最短でも3カ月から6カ月の期間を要していたといいます。それがいまでは週1回のペースで新サービス・新機能のリリースが行える体制ができていると、唐沢氏は明かします。
「サービスによっては、年間の新機能リリースの回数が50回を超えるものもありますし、YourFIT365はまさしく週1回ペースで機能の改善・強化を行っています。なかには、従来型のウォーターフォール手法を使ってサービス品質を担保すべきとの声もありますが、少なくとも今日のフロントエンドシステムは一度開発すればそれですべてが完結するような仕組みではなく、お客さまの絶え間のない高度化要求やニーズの変化に合わせて継続的な改善をスピーディに行っていくことが必要で、品質もその中で向上させていけば良いというのが私の考えです。しかも、現在のDevOps基盤でもCI/CDツールの活用でビルド、デプロイが自動化され人的ミスも減っており、その点での安心感もあります」
こうした考え方のもと、三越伊勢丹システム・ソリューションズでは今後もアジャイル開発の体制強化を推し進める計画であり、人材育成面でのオープンストリームの支援にも大きな期待を寄せています。
「オープンストリームの支援により、アジャイル開発/DevOpsのための基盤は整えることができましたが、それを使いこなせる若い力がまだまだ足りていないと感じています。そうした若手人材の育成に対しても、オープンストリームの貢献を期待しています」
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オープンストリーム プロジェクトリーダー・エンジニア
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株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ
ICTプラットフォーム部長
唐沢 猛氏
株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ
天野 悠史氏