事例

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【トップ対談】技術とビジネススキルの両輪がモビリティサービスの未来を切り拓く

KINTOテクノロジーズ株式会社
業種

インターネット・Web

課題

  • 自社のビジネススタイルに柔軟に順応できる姿勢を持ったパートナーの確立
  • 機能単位の小さいサイクルで繰り返し開発する、アジャイルなソフトウェア開発のスタイルに対応した組織づくり
  • 高い技術力に加えてビジネスの視点を持ったエンジニアの育成
キーワード
Webサービス パブリッククラウド アジャイル

トヨタグループによるモビリティサービスの世界展開をデジタル技術で実現するKINTOテクノロジーズ株式会社。同社の主力事業のひとつが、トヨタ自動車株式会社と株式会社KINTOが2019年3月から提供している新車のサブスクリプションサービス「KINTO」のシステム開発です。オープンストリームは、2019年11月頃からエンジニアリングを人と技術の両面でサポートをしています。
このたび、KINTOテクノロジーズのサービス開発責任者である取締役副社長 景山 均氏と、オープンストリーム 代表取締役社長 芝村 健太との対談の機会をいただき、開発の背景や事業方針、モビリティサービスの未来について意見を交わしました。


新たな価値を提供する取り組みを次々と
次の狙いはサブスクのグローバル展開

KINTOテクノロジーズは、トヨタグループ各社が展開するモビリティサービスやビジネスにテクノロジーの側面から貢献しています。主力事業は、車のサブスクリプションサービスであるKINTOです。同サービスは、車両に加えて保険や税金などの諸経費を月額利用料に含めるという新たな自動車利用の選択肢を提供するもので、2019年3月にトヨタ・レクサスの新車を対象として始まりました。

サービス開始当初は3年契約プランのみでしたが、のちに5年や7年といった契約プランも追加され、いつでも解約できる解約金フリープランも登場。現在では新車だけでなく中古車も対象とした多彩なサービスを展開しています。2019年3月から2021年12月までは3万件だった契約数が、2022年の11月には5.2万件へと伸びており、堅調に成長を続けています。気軽に利用できるサービスを充実させ、これまでとは異なる層への自動車ニーズの発掘に成功した結果とも言えます。

さらに、2022年12月には新型プリウスの登場に合わせて新プラン「KINTO Unlimited」を発表。これまでのサブスクリプションサービスにトヨタの最新技術を駆使し、「ソフトウェアとハードウェアの『進化』=アップグレード」と「お客様の運転データを活用したクルマと人、双方の『見守り』=コネクティッド」という2つの付加価値を加えました。車両に対してソフトウェアとハードウェアの両面から継続的なアップグレードを図ることで、その価値を維持していくという新たなビジネスモデルの試みとなっています。景山氏はこの取り組みについて次のように語ります。

「トヨタとしては初めての販売の仕方です。これまでのような売り切り型ではなく、ご購入いただいた後も継続したソフトウェアのアップデートを受けられて、ハードウェアの後付けもできます。これまで納車後のハードウェア後付けには施工を伴う膨大な作業時間がかかっていましたが、新開発の『アップグレードレディ設計』ではあらかじめ簡単にハードウェアを追加できる設計になっており、欲しくなった時に気軽にアップグレードできます。このサービスは車の設計段階からかなりエポックメイキングな取り組みになっています」 KINTOテクノロジーズのサービス開発責任者という役割のなかで、グローバルなITサポートも担当している景山氏は「ここ数年コロナウイルスの影響でモビリティサービス全般がスローダウンしていましたが、ようやく2022年後半から盛り返してきました。各国でさまざまなモビリティサービスをスタートする機運が高まっているので、我々はテクノロジー面で支援をしていきます。2023年はグローバルでサブスクリプションサービスをしっかりと立ち上げる年になります」と今年の方向性を語ります。

KINTOテクノロジーズ 取締役副社長
景山 均氏

外部委託ではなく、パートナーとして共に刺激し合える”共創”がカギ

成長を続けるKINTOテクノロジーズの新たな挑戦を、システム開発の人と技術の両面でサポートしているのがオープンストリームです。景山氏は「オープンストリームさんとは2019年11月頃からお取引を開始しました。Javaを使った開発力に強みがあり、AWSに精通している方々を当時探していました。オープンストリームさんはそのいずれも得意分野だったことと、仕事ぶりを知る社内のメンバーからの推薦もあってお願いすることにしたのがきっかけです」と取引開始の背景を語りました。

オープンストリーム代表取締役社長の芝村は「当社は創業時からコンシューマーサービスに強みを持っています。KINTOテクノロジーズ様に我々の知見や能力、実績を認めていただき、短期間のうちに大きなご発注につながりました。現在、若手からベテランまで多様なエンジニアがプロジェクトに関わらせいただいていますが、グローバルかつサービスとしても新しい試みとなるため、よりレベルの高い技術力が必要です。そのため、プロジェクトに貢献できるだけでなく、当社の社員にとっても、成長ステージを上げていける良い機会をいただいていると感じています」と両社の協業による好作用を語りました。

オープンストリームメンバーの多くは、主力のサブスクリプションサービス開発を担当しています。景山氏は「当初、オープンストリームさんは品質を重視して、開発を進める際にもプロセスごとにしっかりと確認しながら着実に進めるスタイルでした。一方、我々は一刻も早く世に出すことに重きを置いています。そのギャップのため、当初はお互いに苦労がありましたが、これまでの密なやりとりを通して、今では我々の開発スタイルに柔軟に適応してもらっており、現場からの信頼も高まっています。2年、3年と一緒にやる中でお互いに成長できたと実感しています」とチームアップの経緯を語りました。

KINTOテクノロジーズでは、オープンストリームとともに顧客ニーズに合わせたサービスの機能開発を進めています。ニーズの高まりにつれてシステムの規模も拡大し、2023年1月現在、東京・仙台・福岡など複数の拠点から31名のメンバーがKINTOテクノロジーズのプロジェクトに参加しています。景山氏は「ある程度メンバーを固定してもらっているおかげもあり、両社の社員同士でスムーズにコミュニケーションできていることが開発の生産性向上に貢献しています。我々はスピード優先で開発するため、ハードなスケジュールのプロジェクトも多いのですが、おかげさまでしっかりとスケジュールに沿ったリリースができています」と話しました。

一方、芝村は「KINTOテクノロジーズ様のパートナーとして共創を実践していきたいと考えています。高い技術力があるのは大前提で、その上でさらにビジネスパーソンとしての能力も備えた良いエンジニアを育て、ご一緒させていただければと思っています」と考えを述べました。これに対し、景山氏は「我々が社員に求めていることもまさに『ビジネスに対する興味・関心』です。我々はシステムを作っているのではなく、ビジネスを作っているのですから。単純にリクエストされたものを作るのではなく、我々がどんなビジネスを行っていて、そのためにどんなプロダクトを作っているのかというところまで興味・関心を深く持ってもらえれば、お互いにモチベーションが高い状態で協業ができますし、両社の社員がより成長できるような環境が作れると思います」と応えました。

オープンストリーム 代表取締役社長
芝村 健太

車の「ゆりかごから墓場まで」
進化するサブスクサービスを共に加速させる

技術面だけでなく、お互いに成長しあうチームとして、オープンストリームとの協業でこれまでさまざまなサービスを世に送り出してきたKINTOテクノロジーズ。パートナーに対し、高い技術力だけでなくビジネスに対する高い視座も求める理由は、トヨタグループが推し進めるバリューチェーン戦略にあります。景山氏はかつて社会保障の文脈で掲げられた「ゆりかごから墓場まで」のコンセプトを引き合いに出しながら、戦略を以下のように説明します。

「今までのトヨタ自動車は売り切りビジネスで、新車を作って販売店様に卸すところまでが主な事業で、中古車のビジネスに深くコミットすることもありませんでした。しかし、資源の有効活用やSDGs、ESG経営を考えると、製造した車はきちんとトラッキングし、最終的には回収、リサイクル、リユースしていくところまで責任を負っていかなければならないと考えています」(景山氏)

クルマのライフサイクル全体を考えた省資源とリサイクル

さらに、景山氏は2022年12月にサービス開始を発表した「KINTO Unlimited」について「車の技術は加速度的に進化しています。そこで、中古車に乗られているお客様だとしても、最新のテクノロジーの恩恵を享受していただきたいと考え、ソフトやハードをいつでも最新のものにアップグレードできるKINTO Unlimitedを始めました」と説明しました。

また、2021年に行われた東京オリンピックでは、選手村の移動手段として自動運転EVバス「e-Palette」を提供しました。e-Paletteは内装が自由に変えられるため、さまざまなシーンでの利用が可能です。景山氏は「e-Paletteのような新しい製品がこれからも出てくると思います。まだ個人的な見解ではありますが、こうした製品は今までのスタイルのように売り切りで販売するだけではなくサービスとして提供していく可能性もあるのではないかと思っています。それこそが我々がモビリティサービスと掲げるところの1つの形になるのではないかと考えています。今後こうした新しい取り組みをさらに加速させていくために、パートナーであるオープンストリームさんとともに技術力を高めていきたいです」と語りました。

景山氏の考えを受けた芝村は次のように語ります。
「弊社では、技術とビジネススキルを兼ね備えたエンジニアを『xtoC(クロストゥシー)エンジニア』と呼んでいます。KINTOテクノロジーズ様のような最先端のBtoCサービスでも、BtoBtoC、CtoCなどさまざまな分野でも幅広く期待に応えられるよう『xtoC』ビジネスに対応できるエンジニアを育てていこうとしています。弊社のエンジニアがそのレベルに成長することで、本当の意味でKINTOテクノロジーズ様にとって必要不可欠なパートナーとなれると思っています」

技術とビジネススキルの相乗効果で次世代のビジネスを加速させる

高い技術力とビジネススキルで、モビリティ市場におけるWeb領域の先駆者を目指しているKINTOテクノロジーズ。2023年の夏にはオープンストリームと再構築を進めている新しいKINTOサービスサイトのオープンも控えています。

過渡期にある市場において、時代の変化に対応したスピードと品質の両方が求められる中、これからも次々と新しい価値のサービスを迅速に世に送り出すことが、オープンストリームとの共通のミッションと言えそうです。

「オープンストリームさんはエンジニアリングカンパニーとして、技術に対する興味とチャレンジ精神を常に根底にお持ちかと思います。新しいものを生み出すためには『とにかく作ればいい』という訳ではなく、プロダクトとしての競争力、スピード開発能力、チーム力、最新技術のキャッチアップなど、さまざまな強みが大切な要素となります」(景山氏)

オープンストリームとの密なコラボレーションによる互いの成長にも期待を寄せる景山氏は、対談の最後に今後の展望について次のように述べました。
「エンジニア自身がビジネスもドライブしたいと考えているかどうかが非常に重要です。現在オープンストリームさんが取り組まれているエンジニア育成を通じて、元々備わっている高い技術力とテクノロジーへの興味関心にビジネススキルが加わるでしょう。そうすればお互いの波長がよりシンクロしてギアもガッチリと噛み合い、さらにスピード感を持った開発を加速していけると信じています」(景山氏)

ユーザープロフィール
KINTOテクノロジーズ株式会社
トヨタファイナンシャルサービス株式会社の子会社として2021年4月に設立。自動車のサブスクリプションサービスなどのシステム開発・運用のほか、企業経営戦略・マーケティング戦略の企画、コンサルティングを手掛ける。
KINTOテクノロジーズ株式会社

KINTOテクノロジーズ株式会社

取締役副社長

景山 均氏

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